大規模災害が起きるとすぐに駆けつけてくれて、その後も丁寧な支援を続けてくれる自衛隊の存在は、とても頼もしいものです。
東日本大震災での災害派遣では、その災害対応能力が世界トップレベルであることを、改めて証明しました。
高い能力のプロ集団
自衛隊の災害派遣は、『天災地変その他の災害に対して人名または財産の保護のために必要があると認められる場合は、都道府県知事等の要請(ただし、特に緊急を要する場合は、要請を待たずに)に基づき、防衛大臣またはその指定する者の命令により派遣され、捜索・救助・水防・医療・防疫・給水・人員や物資の輸送など、様々な災害派遣活動を行う』(陸上自衛隊HPより)とされていて、これは陸・海・空自衛隊とも共通です。
上記の災害派遣活動項目は、災害時に被災者が求めることを網羅しているのがわかります。そのすべてを組織的に、大規模に行える人員と機材を有する、プロフェッショナル集団なのです。
なお、“緊急を要する場合は要請を待たずに”出動できるとされたのは、1995年の阪神・淡路大震災において、知事の派遣要請がなかなか出ずに、被災地内の部隊さえしばらく動けなかったことの教訓からです。
2011年の東日本大震災では、地震発生直後から大規模な
災害派遣命令を見越し、被災地近隣だけでなく全国の部隊で独自判断の出動準備が行われ、速やかな出動につながりました。
その災害派遣活動は、組織力や機動力を活かしたものだけでなく、被災者の心情にまで配慮したきめ細やかなもので、それはまさに”日本の自衛隊ならでは”と言えます。
一例として、大規模災害時に登場する『屋外入浴セット』は、制式装備としては世界で自衛隊のみが保有しているものです。(シャワー設備が一般的)。本来は隊員用の装備ですが、被災者用に転用することで、お湯に浸かりたいという日本人の心情を満たすものと言えます。
東日本大震災では、海上自衛隊の艦艇内の風呂まで、被災者用のために使われました。
組織でこその実力
地震などの発災直後、行方不明者がいる地域に自衛隊の部隊が進出すると、被災者から捜索や救助の要請が殺到することがあります。
それは当然なのですが、「ちょっと2~3人貸してくれ」というような要請も多く、断ると怒られて現場指揮官が困惑するようなことも少なくないそうです。
自衛隊は、命令の下に組織的に動くプロ集団ですから、そのような要請は基本的に受けられません。
例えば、捜索時には指揮、伝令、偵察、捜索、安全管理、搬送などの任務分担が必要で、1軒の家を捜索する場合でもその人数は20名ほど、陸上自衛隊で言えば1小隊規模を投入しなければならないのです。
そのように、自衛隊はあくまで部隊として機能するよう組織され、訓練されているので、災害派遣と言っても、頼めばなんでもやってくれる存在ではないということを、支援を受ける側も覚えておく必要があります。
依頼を受けられる場合は、“依頼を受けるように命令されている”場合というわけです。
さらなる進化
近年、我が国を取り巻く環境は緊張を増し、自衛隊の存在はより大きくクローズアップされています。そんな中で、本来の軍事組織としての役割だけでなく、災害対応能力も大きく進化しています。
高性能の捜索・救難・支援装備などの充実だけでなく、東日本大震災後からは、大規模災害発生時の初動対処部隊、通称ファスト・フォースが全国各地の駐屯地に即応待機するなど、より迅速で効率的な災害派遣体制となっています。
日本は、災害大国です。しかし、ひとたび大規模災害が起きれば、自衛隊という“世界最高の味方”がいる国でもあるのです。