大規模災害が起こると、必ずと言って良いほどデマが広まります。デマに惑わされないためには、どうしたら良いのでしょうか。
デマのできかた
デマには、2種類あると考えられます。ひとつは、悪意によるもの。2016年に発生した熊本地震の直後に、動物園からライオンが逃げ出したというデマがSNSに流され、一気に拡散されたのが典型です。
もうひとつは、情報に尾ひれがつく場合。例えば『今後1週間ほどは震度6弱程度の余震に注意』という正しい情報が、いつの間にか『1週間後に震度6弱の余震が来る』、さらには『○月○日に震度6強の余震が来る』というように、どんどん尾ひれがついてデマ化して行きます。
1923年の関東大震災では、在日朝鮮人が暴動を企てているというデマが流れ、多数の在日朝鮮人が住民によってリンチにかけられるという事態にまで発展しました。
これは、悪意と尾ひれが合わさったケースと言えます。しかし昔話ではなく、デマのメカニズムに関しては、ネット時代の今もほとんど変わっていないのです。
デマの広まりかた
デマが急速に拡散される理由にも、2種類あると言えます。ひとつは、不安。災害下の、先が見えない不安の中で得られた情報は、普段ならば信じないような内容でも、そのまま受け入れてしまいやすいのです。
動物園からライオンが逃げ出したなんて、普段ならすぐウソだと思うでしょうが、そこに大地震直後という不安要素が加わることで、事実だと思われてしまったわけです。
もうひとつは、善意。特に災害下の不安の中では、得られた情報をみんなに広めたい、そうすることで、少しでも多くの人を救いたい、という意識が強く働きます。
東日本大震災では、「○○町で閉じこめられている助けて」というようなメッセージがSNSで発信され(実は悪意によるウソが大半でしたが)、それが全国的に拡散されるということが起きました。全く無関係の遠隔地の人までもが、拡散に”協力”したのです。
それは、自分は直接関われないけど、拡散することで少しでも救出の可能性を増やしたいという善意からの行動であり、デマの多くがそうやって拡散されて行きます。
デマの見分けかた
このように、デマには『悪意と尾ひれ』で生まれ、『不安と善意』で信じられて拡散されるという、人間心理に根ざしたメカニズムがありますので、この先も増えこそすれ、無くなることはないでしょう。
私たちはデマ情報を見分け、行動を誤らないために自衛しなければなりません。しかし特に災害下では、情報の正誤を確かめる方法がごく限られてしまいます。
そこで、デマ情報の傾向を知ることが大切です。そのひとつの方法は、『信じたくなることほど信じない』という考え方です。
ネット上で大量に拡散されている、あちこちで耳にする情報ほど、デマの可能性が高いと言えます。そんな情報の大半は、人々の不安心理に”ヒット”しただけ。
もとより、正しい情報が限られている中で、誰もが飛びつきたくなるような情報がネットや口コミで入って来ることなど、まずありません。
そんな情報に接したら、まず周りの人に意見を求めましょう。例えば”日付入りの地震予想は全部デマ”という、正しい答えを聞けたり、出所の明らかな正しい情報を聞けたりするかもしれません。
そして、それが事実だと確認できるまでは、ましてや自分に無関係のことは拡散しないこと。仮に善意からであっても、それは”デマ被害者”を増やすだけの迷惑行為にすぎません。あなたがやらなくても、誰かがやっています。
くれぐれも、デマに踊らされて自ら危険な行動をしてしまったり、デマ拡散の片棒を担ぐことなどありませんように。災害下に限らず、“耳よりな情報ほどウソだらけ”ということを忘れずに。