楽しい旅行の最中でも、災害は襲ってくるかもしれません。旅に出る時は、そこから生き延びる方法も現実の問題として考え、備えておきましょう。
旅先はかなり“アウェイ”
あなたが普段暮らしている場所は土地勘があり、周りの状況も知っていて、家族や知人が近くにいる言わば“ホーム”です。スポーツに限らず、“ホーム”では誰もが力を発揮しやすいものです。
それに対し、旅行中は言わば“アウェイ”に出ている状態。土地勘がなく、そこで何が起こりやすいかもわからず、知り合いもいません。しかも持ち運べる荷物は限られます。さらに海外旅行ともなれば、社会体制や習慣、そして言葉の違いが立ちはだかります。防災の目で見ると、旅行中は非常に厳しい状態だと言わざるを得ません。でもそんな状態だからこそ、ちょっとした備えと行動が、いざという時の結果を大きく左右するのです。
事前の情報集めを
ホームとアウェイの最大の違いは、あなたが持っている情報量です。災害時に素早く正しい判断をするためには何より正しい情報が必要であり、それを事前にどれだけカバーできるかが大切になってきます。
なじみの無い場所に行く前には、まずその場所の災害に関する情報を集めましょう。必要なことは、そこで何が起きる可能性が高いかということ。例えば海沿いなら津波や高潮、密集地なら倒壊や火災、川沿いなら洪水、山間部なら山崩れや土石流などという、地震や気象災害で起こりやすい危険がわかります。さらに過去の災害記録をさかのぼっておけば、危険をより絞り込めるでしょう。
ありがたいことに、必要な情報はネット検索で大抵は手に入ります。具体的には、まず地図や画像で周辺の地形などを見ることで、起きやすい災害の種類がわかります。そして地名と災害種類で検索すれば、過去に起きたこともわかります。ストリートビュー機能を使えば、海外でも周りの様子や避難経路まで見ておける場所も多いのです。使わない手はありません。
旅先に合わせたグッズを
情報が手に入ったら、持参する防災グッズを選びます。ポイントは、必要最小限のものを最小のサイズにということ。旅行に限らず、防災のために本来の目的が制限されるようでは本末転倒です。まずは緊急避難時の安全を確保し、しばらく自力凌ぎ、ある程度の危険に対処するための6つの要素を、できるだけコンパクトにまとめます。下記に、各要素とグッズの一例を挙げてみます。
携帯用簡易浄水器(商品名「Mizu-Q」、「スーパーデリオス」など)水道の水質も怪しい海外旅行では必須
最低でも1日程度は凌げる携帯食品(商品名「カロリーメイト」など)
緊急避難時の視界確保は絶対。防水機能のある小型LEDライト(光束単位25ルーメン以上を推奨)
常用する雨傘以外にコンパクトなレインコート、ポンチョ類。防寒にも有効
絆創膏、防虫薬、清拭・消毒用シートなど
携帯電話やネットの途絶に備え、小型トランジスタラジオ
とりあえずこれだけあれば、かなりの状況に対応できるでしょう。あとは旅先の状況に合わせてアレンジしてください。ドライブ旅行ならばより多くの防災グッズを持参できますから、道中の立ち往生なども考えて水や食料を増やし、簡易トイレなども加えたいところです。
そして最も大切なこと
ここまで旅先の情報を集め、防災グッズを備えました。しかし本当に大切なのは、現地に行ってからです。
まず宿では非常口の場所、そこまでの経路、非常設備、周辺の避難場所などの確認は絶対に。そして観光やビジネスの最中でも、行く先々で周辺の様子をよく見て、頭の中の1%くらいは、例えば「ここで大地震が来たらどうなる、どうする?」などと、起こり得る危険と行動を常に考えておくことです。
そんな行動と事前の情報が結びつけば、不慣れな“アウェイ”でも素早く効果的な避難行動に移れるはずです。そしてそれこそが、大災害から生き延びるための最良の方法なのです。