職場での防災は、前提となる条件が千差万別です。仕事の効率を優先すれば、厳しい条件のことも少なくありません。そこで必要なことは、社員それぞれが自分で対策を考え、備えておくことです。
【職場を防災の目で見る】
職場で大災害に遭ったら、まず発災直後の危険を避けなければなりません。そして交通機関が止まり、移動や帰宅が困難になった場合の対策も必要です。最近は帰宅困難に備えて水、食品、寝具などの備蓄をしている職場も増えていますが、それを役立てるためには、まず各人が自分の安全を守らなければならないのです。
とは言え仕事中は事務所、工場、店舗、倉庫、外回り、運転などあらゆる環境がありますから、具体的に共通する防災対策はほとんどありません。しかしその前段階で、すべてに共通する大切なことがあります。それは、地震や気象災害が起きた時、自分の職場で何が起きるか、どう行動すべきかを徹底的に考えておくことです。つまり、職場を“防災の目”で見るのです。
【職場の危険を知り尽くせ】
事務所の地震対策を例に考えてみましょう。キャビネットや机の固定などの対策が十分な事務所は、あまり多くありません。それ以前に、建物自体の耐震性が低いこともあります。さらに海沿い、斜面、繁華街や密集地の中など、津波、がけ崩れ、火災といった二次的災害の危険が大きな場所のこともあります。高層ビルならば、独特の『長周期地震動』に襲われるでしょう。
まず、自分の職場のこのような危険要素を十分に知らなければなりません。そして、それらに対処するためにはどうすれば良いのかを考えます。
事務所での地震対策の場合、建物は倒壊する可能性があるか、あるならどこが崩れやすいか、キャビネットの転倒やコピー機などの暴走などは起こるか、ガラス飛散の危険は起きるか、停電したらどうなるか、出火の危険はあるか、避難経路に障害はあるか、脱出した後に落下物などの危険はあるか、周辺に安全な避難場所はあるかなどを良く調べるのです。
【その時、どう動くか考える】
その上で、行動を考えます。例えばオフィスの頑丈な机は有効なシェルターになりますから、まず机の下に入る、避難経路に危険が無ければ一気に屋外へ移動する、転倒したキャビネットが机や壁など当たってできる『三角形の生存空間』に身を伏せるなど、発災害直後に自分の身を守る具体的な行動を考えておきます。
基本的には、自分の居場所のどこに『生存空間』ができるかを探しておくのです。そうすることで、いざという時に頭が真っ白になりにくく、すぐに行動に移れる可能性がとても高くなるのは間違いありません。
このように、あらゆる職場を普段から防災の目で見て、考え、実際に動いておくことが職場での防災対策に不可欠であり、最も大切なことです。この段階で無事でいなければ、その次の避難行動に移ることはできないのです。
【帰宅困難に備える】
段階でほぼ必ず直面するのが、交通機関の途絶による帰宅困難です。
移動が安全になるまで職場で待機するのが基本です。でも移動を始めた後は、自分の身は自分で守らなければなりません。長時間の歩行や悪天候に備えて、最低でも歩きやすい靴と雨傘以外のレインコート、ポンチョなどの雨具を職場に備えておきましょう。可能であれば履きなれたスニーカーを一足会社に置いておきましょう。
仕事中の格好は、多くの場合でアウトドアには全く不向きですが、これだけの対策で天地の差となります。道中で水や食品は手に入らないと考え、職場に備蓄が無い場合は自分で備えておく必要もあります。
【社員の安全が基本】
近年は災害後のBCP(事業継続計画)を策定している企業も多いのですが、立派な計画よりも大切なことは、社員がみな無事でいることです。人がいなければ、どんな計画も動きません。もしあなたが経営者や管理者ならば、社員みながこのような意識を持って行動できるよう促すことと、連絡方法なども含めて自社に見合った非常時の体制を作っておくことをおすすめします。
どこかからお仕着せの『防災計画』だけでは、少なくとも発災直後にはほとんど役に立ちません。